サクラと密月



すっかり忘れていた記憶を思い出し、少しうろたえた。


駄目だ。何考えているんだろう。


自分の考えに慌てた。



そんな自分を悟られないように、話を変えた。


主に仕事の話だ。


会社の愚痴や毎日のたわいのない事をつらつらと話す。


彼女はニコニコしながら聞いていた。


そのうち様子が少しおかしいことに気がつく。



蘭はこんなに話を聞くタイプじゃなかった。



勝手に俺の所に来て勝手にべらべら話す奴。


それがアイツだった。


そして俺もこんなにベラベラ話す方ではなかった。


自分か一番ビックリしていた。


話が一通り終わると、俺は水を飲んだ。


彼女も同じ様に水を飲むと、窓の外を見た。



「いいなあ、恵介凄く楽しそう。羨ましい。」


そう言って寂しそうに笑った。


その横顔に俺は、強烈に引き寄せられた。


今の生活が上手くいってないのか?でもまだ一年ほとしか経ってないぞ。


「何文句言ってるんだよ、世界中で一番幸せになります。って言ってただろ。」



そうだ、だから俺は諦めたのだ。