サクラと密月




以来俺は、香織を適当にあしらうことにした。


前よりずっとハッキリと。


実はあの後、彼女とは二人きりで何度も会っていたのだが、以来適当に話を作って


逃げ出した。


ただ部長とのことは、和彦と俺との秘密になっている。


もし彼女が何かしら言ってきたら、こっそり言ってやろうと思う。


切り札は多い方が絶対にいい。



未羽とは相変わらずだった。


香織とのことがあったせいで、後ろめたい気持ちがどうしても彼女との距離を


作りだしていた。


彼女のことを知っている先輩などには、よくからかわれているがその度心が痛む。



もう出会って随分になるが、出会った頃のままの彼女は俺にとってなんなのだろう。


親にもそろそろ身を固めたほうが、仕事に集中できるとか皆に言われる。


この間結婚した先輩にも言われた。


このまま未羽と結婚すれば、多分幸せな結婚ができるだろう。


しばらくして子供ができる。


多分未羽なら、問題もなく仕事に専念できるだろう。


彼女に限って子供を預けて、問題など起きるなんて考えられない。


近所の人とも親とも上手くやっていってくれる。


そう思うと益々自分のしたことに疑問を感じる。



俺の欲しい物って一体なんなんだろう。


季節はあっという間に、夏を過ぎ秋になった。