「よく来るんてすか?」


「車買ったばかりの頃は良く。今は連れも彼女がいるから気が向いたらかな。」


私は頷きながら、サンドイッチを頬張った。


なんだかいつもと味も違う気がした。


「夜景を見ながらこんな風に食べるのいいですね。」


「気に入って貰えて良かったです。連れてきても楽しんでもらえるか、心配だったから。」


「女の子はこういうの嫌いな子もいるでしょ。」


期間限定のチョコレートをコンビニで見つけたので、それを食べようとする。


彼にも渡す。


「これ、食べて見たかったんです。最近のコンビニのお菓子は侮れない!」


「あー、こういう所で食べると凄く美味しい♪」


潮の香り、海の音、遠くで光る街の光。


全てが特別で、なんだかいとおしく感じた。


「学校の遠足みたいですね。うん、海の香りがする!久しぶり!」



彼の彼女の話は聞きたくない。


そもそも今の二人は一体何?


でも今は彼を追い詰めることだけはしたくなかった。


だって楽しかったから。それ以上はもういい。



「連れて来てくれてありがとうございました。あの時、ちょっと泣きそうでした。」


そう言うと彼は何も言わずに優しく、優しく抱き締めてくれた。



桜の時とは違う、暖かく優しい抱擁。


それ以上何も欲しくなかった。