店の雰囲気もお客も問題なかった。
テーブルの間隔が十分考えられていて、隣の会話は食事の邪魔をしない。
また、音楽がお店に溢れていて一人で食べていても全然退屈じゃなかった。
料理が来るまで、店の中を見回す。
壁には、ミュージシャンの演奏のチラシがあちこちに貼られていた。
ジャズからバンド、ピアノがあるからクラッシックのチラシまである。
暫くして運ばれてきた料理も美味しかった。
ワインも文句なかった。
食べながら、舞台の横の今日のスケジュールを見た。
今日も、もう少ししたら演奏があるらしい。
サックスとピアノのジャズ。
いいな、せっかく来たから生演奏どうしても聴きたくなった。
デザートと飲み物、温かい紅茶を頼んだ。
予算オッケー、後は待つだけだ。
運ばれたデザートを食べながら待つ。
お店の中も人が増えて来た。
入口で待ってる女の子が数人いた。
ラッキー。
こんなに広い机に一人で独占なんて。
しかも舞台のすぐ近くだ。
紅茶を飲む頃、音楽が止んで照明が落ちた。
舞台の横から、まずピアノの人が出てきた。
その後ろを、サックスを持った男の子が歩いて来た。
その子が舞台に立つと、小さなスポットライトが当たった。
後ろから、女の子の小さな悲鳴と、拍手が上がる。
よく見ると、ホールから席に通してくれた男の子だった。
あら、ビックリ。
更に始まった演奏にびっくりしてしまった。
とても良かったのだ。
なんていうか、本当に上手だった。
私はすごく感動してしまった。
こういう場所の演奏は、演奏してるという感じの時もよくある。
でも彼は違った。
なんていうか、パワフルでハートがあって、一生懸命吹いている。
私は不覚にも、その演奏の虜になってしまった。
そう、まさに虜だった。

