サクラと密月



私はハルの車の後部座席に乗り込んだ。


愛果は助手席。


小さな軽自動車は重そうに走りだす。


「この近くなんだ、お店。今日うちに泊まっていこうよ。」


そう愛果が誘ってくれた。




確かにその方がいいかも。


私は両親に電話した。


学生時代何度も愛果の家には泊まったので、両親もじゃあ寝るね。と言ってくれた。


電話が終わると店に着いた。


見た目は大きな喫茶店という感じだ。


愛果の後ろについて店に入った。


ハルは裏口から入ると言って別れた。



落ち着いたお店の中は広くて、奥にグランドピアノと小さな舞台があった。


舞台の両側には大きなスピーカーがある。


舞台を囲むようにテーブル席があった。


舞台の前の右側のテーブル席に二人で座った。


お隣には年配のカップルが向かいあって座わり、話をしていた。」


お酒も飲めるらしい。


「ハルはサックス奏者なんだ。」


ウェイターが来たので注文をする。


愛果がジンを頼んだので、一緒のものを頼んだ。


「最初この店喫茶店だと思ってたんだよね、仕事帰りに一人で食事するの嫌で


店に入ったんだけど。」


他の席も見まわす。


愛果の言う通り、食事している人もいた。


「ちょうど入ったのが金曜の夜で、舞台で生演奏が始まって、そこにハルがいたの。」


「すごく演奏上手でファンになっちゃった。」


そう言って嬉しそうに笑う。


元々愛果は音楽好きだ。


そして私も。


「そっか、よく一緒にライブ行ったっけ。」



路上ライブも愛果が足を止めるから、一緒に見たっけ。