サクラと密月



愛果が慌てて、声をかける。


「ちょっと、大丈夫。」


「うん、ちょっと酔っ払っちゃったみたい。」



そう言って笑うしかできなかった。


「蘭は真面目なんだよね、もう少しいい加減でもいいのに。」


そういって抱きしめてくれた。


「でも、そんな所も蘭だよね、圭介も大変だ。」


そう言って背中をさする。


その言葉、今の私の心を軽くしてくれる最高の言葉だよ。


「なに、それ。」


ぷっと笑いがこみ上げてくるのに、一緒に涙まで出てくる。



愛果が男なら、私絶対恋してる。



そう愛果に話すと、


「こんな面倒で鈍感な女の子、私には無理、圭介でなくちゃダメでしょう。」


と釘をさす。


そんな所に、また惚れてしまうんだけどな。


そう彼女に言うと、少し涙も収まった。


「残念でした、私にも好みがあるんです。」


と笑った。


早くも失恋か、と私。


なにいってんだか、と私の頭をポンと叩いた。


「蘭はもっと、自分大切にしなよ。恋愛だけが人生じゃないよ。」


そうだね、ホントそうかも。


ありがと、愛果。


すると後ろから男性の声がした。


「おいおい、迎えに来させておいて、女同志で抱き合ってるってどうよ。」


二人でその声の方を見た。


茶色い髪のくせっけの男の子が立っていた。


黒のTシャツに黒のジーンズ、耳には黒い石のピアスをしている。


「まさか愛果が泣かせたとか。」そう言って呆れた顔をする。


愛果が反論する。


その姿に彼がクスクス笑った。


「ごめん、蘭。彼はハル。春樹だからハル。」


私は涙を手で拭うと、はじめましてと挨拶した。


今度は愛果が私の名前をハルに教えた。


「彼女が学生時代からの私の親友。東京から帰ってきたんだ。」


宜しくと、彼も挨拶してくれた。


「さて、どうする。俺今から店で演奏があるんだけど。」


すると愛果が本当、と目を輝かせた。


「ごめん、蘭。彼の演奏聴きたいんだ。一緒に行こうよ。」


こんなに楽しそうな愛果見たことがなかった。


しかもなんだか可愛い。