サクラと密月




そのまま東京駅に向かい、名古屋行きの新幹線に飛び乗った。


新幹線が出る頃には、ホームは真っ暗になっていた。


真っ暗な車窓には自分の顔が映った。


その景色に気持ちが怯む。


目線を膝に向ける。


小さな自分の手が並んでいた。

]
左手の中指には、今日買った指輪がある。


大丈夫。


やがて新幹線は動きだした。


夫から電話があったらどうしよう。



一応言い訳を考えておく。


結局夫からの連絡はないまま、実家へ到着した。



両親は笑顔で私を迎えてくれた。


一人娘の私がいなくなったことで、寂しい思いをしていたのかもしれない。



夫にはメールで実家にいますと連絡しておいた。


住み慣れた家は私をほっとさせた。


こんな気持ちは久しぶりだった。



それからしばらくずっと実家に籠った。


父も母も優しく、夫も特に何も言ってこなかった。




そうして幾日かが過ぎた。



何処からか大学時代の友人の愛果が、私が家に帰っていることを聞きつけて夕飯に誘ってくれた。


次の日愛果と久しぶりにパスタのお店に出掛けた。


愛果は親友だ。


圭介の事も知っている。


よく悩みを相談したっけ。



結婚する時も一番反対したのが彼女だった。


何だか会いづらかったが、今一番会って話したいのが彼女だった。


二人が通った大学の、隣町のお店の駐車場で待ち合わせた。


母の車を借りた。


東京では乗ることのなかった車。


運転も久しぶりだ。


学生時代を思い出し運転する。


数年ほどしか経ってないのに、街が変わっている。


道を何度も間違えて店に着いた。


愛果はもう駐車場で待っていた。


遅れたことを素直に謝る。


彼女は学生時代と同じ笑顔で、


「どうせ迷子になったんでしょ。」と言い放つ。


その通りなので、えへへと笑ってごまかした。


彼女も笑った。


二人で並んで一緒にお店に入った。