夕方電車に揺られて家へと帰る。
少し夕日に赤く染まった電車の中。
今日買ったラピスラズリのことについてネットで調べる。
ラピスラズリは魔除けとして使われていたらしい。
魔とは、他人から受けるものだけでなく、自分の中の魔のからも守ってくれると
いうものだった。
また、恋のお守りとしても使われていた。
ラピスラズリは持つ人に試練も与えるが、本当の愛を呼び寄せる為に、試練を与える。
気に入った。
真ん中にシルバーの小さなチャームがついている。
形もシンプルな長方形に、Xの刻印が刻んであった。
ずっとつけていても邪魔にならない大きさが好きだ。
新鮮な出会いは心に暖かい空気を運ぶ。
何だか一人ぼっちじゃないような気がしてきた。
あの日から、もうずっと自分の中に圭介が住んでいる。
そして、いつもこうして励ましてくれているようだった。
東京にきて、ずっと一人だったような気する。
満員電車に乗っても、その気持ちは変わらなかった。
なのに、圭介と会ったあの日からずっと彼が私の心に住み、彼とお話している
自分がいた。
電車はやがて、今住んでる家のある街に着いた。
同じ街に住んでるはずなのに、知らない人達と一緒に電車を降りる。
見慣れた夕暮れの街。
買い物をする商店街で、今晩のおかずにする材料を買う。
白いレジ袋を下げて、さあ帰ろう。
しばらく歩くと、住んでるマンションが見えた。
その前にマンションのエントランスがあるのだが、そこに夫が立っていた。
声をかけようと近づくと、電話中だと気がついた。
しかも私に気が付かないほど話込んでいる。
なんとなく言い争いしていた。
「だから、もう少しで別れるって言ってるだろう。」
聞きたくない会話ほど、どうして聞こえてくるのかな。
彼が入口に背を向けて話し込んでる後ろを抜けて家へと入った。
もう、いい。
限界。
部屋に戻ると、赤く染まった絨毯の上に座った。
そして私は今日買ってきた指輪を取り出し、左手の中指にはめた。
そうして自分の荷物を鞄に詰め込んだ。
そして家を飛び出した。
マンションを出る時、彼にあわないか心配だったがいなかった。
下らない。
未練なんて少しもなかった。

