ひとしきり海を眺めたが、ここは蒲郡のあの海じゃなかった。
そして、あの日の二人はどこにもいない。
そのことに、気づいただけだった。
出逢いたかったものが、ここにはないと自分に言い聞かせるまで、そこから離れなかった。
どのくらいの人が後ろを通りすぎただろう。
でも私を気に留める人はいなかった。
帰ろうと歩き出し、駅までの道をのんびりと眺める。
小さくてまるで玩具箱みたいなお店が並んでいた。
店先は、オレンジ色のカボチャ、オーランタンや紫色した魔女の模様の入ったお菓子が
並んでいる。
もうすぐハロウィインなんだ、そう気が付く。
中を少し覗く。
どうせ待っている人もいないのだ。
可愛い雑貨が並ぶ店の中。
不意に、圭介にこの小さくて可愛いカボチャの置物をあげたらどんな顔をするだろうと
想像した。
きっと爆笑するだろう、そして文句を言いながらも笑顔になる。
そしてありがとうと言ってくれる。
そんな気がした。
その想像は、店を歩きまわっている間中続いた。
持ち手がまさに、ミントグリーンの手の形のお玉はきっと、二人で顔を見合わせて
笑うだろう。
気持ちよさそうな猫の小さな置物には、多分可愛いと溜息をつく。
圭介を思って歩く。
それがまるで彼といるような錯覚を私に与えた。
結局、彼が喜びそうなシンプルな名刺入れを、一つ買ってしまった。
お金を払う時、ちょっとドキドキした。
お店を出ても、その気持ちは変わらなかった。
隣のお店はアクセサリーのお店だった。
その気持ちのまま、お店を覗く。
髪飾りがメインのそのお店
少ないけどアクセサリーも置いてある。
女性が好みそうな、細い鎖のネックレスや、小さなリボンのついた指輪。
圭介とデートするなら、どんなアクセサリーをつけよう、そう思うとワクワクしてしまった。
その中で、青い小さなラピスラズリの石でできた指輪に目が止まった。
これ、気に入った。
今日からこれをつけよう。

