サクラと密月




返事が来ても来なくても、行き止まりの自分の気持ち。



生まれて初めて書いた本気のラブレター。


大人になって書くなんて思わなかった。



書いたことで自分の気持ちを解放したことと、その気持ちを圭介に否定されたらという恐怖から


その日はスマホを開くことが出来なかった。


でも、そんな自分がたまらなく愛おしかった。


こんな気持ちは初めてだった。



次の日、誰もいない夜。


一人の部屋でそっと開く。


彼からの返事はなかった。


でも大丈夫。


私の中には、彼との思い出がある。


だから、白い壁の部屋にいても平気だった。


 心のなかで何時でも彼に逢えた。


そして、そうしている事がとても幸せだった。


それから毎日メールを確認する楽しみができた。


返事は来なかったけど、それでも良かった。
 

待ってることができたから。


そんな日々が続いた。


夫婦の関係は冷め切って、夫の帰りが以前より更に遅くなった。


私も以前の様に、彼に甘えて感情をぶつけたりしなかった。


だからだろう。


帰ってくると機嫌が良かった。


彼は誰にも何も言われず、好きなことができているからだと思う。



私も彼には、もう何も求めていなかった。



そんなある日、夫が休日に急に出勤になった。


私は久しぶりに、一人で海を見に行くことにした。


ゆりかもめに乗ってお台場に行く。


休日の為、人が一杯だった。


家族連れ、友達と一緒に騒ぐ学生。


色んな人がいるんだと、今更ながら考えた。


お台場駅で降りる。


一人で歩く休日。


歩きながら、もしかしたらと思う。


そう、この中に圭介がいるのじゃないかということ。



今会いたいのは、そうあなただけだった。



それだけしか頭になかった。


少し歩くと公園がある。



海が見えるのだ。



ところがそれは、思い描いていた海と違った。


波もない静かな海。


海の色も灰色で海というより、水が溜まっているだけ。


潮の香りもなかった。


私は一人で海を見ていた。


周りに人がいるのに、海を見る人はほとんどいなかった。