あの日流れた涙。
そんな勝手な感情を圭介は思った通り、優しく包んでくれる。
ああ、なんて私は馬鹿なんだろう。
こんな大切なこと、今頃気が付くなんて。
何も言わない彼。
でも、愛情はちゃんと伝わってくる。
いつも近すぎて見えなかった。
当たり前としか思ってなかった。
でも、もう遅いのだ。
彼の優しさも愛情も、もう私は触れてはけないものなのだ。
近くにいる彼に、昔の様に甘えたくなる衝動をなんとか抑える。
何とか彼との繋がりも模索する。
答えはちゃんとわかっていた。
私に出来ることはもうないのだ。
店をでて、私を気遣う彼。
昔の様にずっと一緒に居たい、このままずっと。
彼の優しさだけ見ていたい。
あの白い壁の部屋に戻ることは嫌だ。
彼の後ろを昔の様に歩く。
でも、私はもう昔の私ではなかった。
圭介を思う気持ちも、昔とは違っていた。
もっと暖かく、優しいもの。
以前と違う、少し大人の自分が心の中で呟いた。
彼にだけは絶対迷惑かけたくないと。
それは以前のような彼に対する負けたくはないという気持ちではなかった。
この何より大切な物を、誰にも傷つけさせたくはなかった。
そう思ったからあの行動を取った。
このまま何も言わず彼の前から消えること。
自分勝手な馬鹿な自分にはお似合いだった。
彼の背中が駅に消えるまで見送った後、泣きながら家へと帰った。

