星に願いを~たくさんの幸せをありがとう~




~蒼 side~



『…サイテー。』


そう言って美姫は保健室を出ていってしまった。

はぁ……

泣かせちゃった…。

何してんだ俺…。

叩かれた頬に手をあて

ドアを見つめていると


シャッ


!?

誰だ!?

誰もいないはずなのに…

音のした方をみると


黒木『大丈夫?』


カーテンの裾を持った黒木が立っていた。

なんで黒木がここに…


黒木『痛そうだね…かわいそう。』


近づき俺の頬に手をあてそう呟いた。


蒼『…別に大丈夫だから。
てかなんでここにいんの?』


黒木の手を振りほどき気になってた事を聞いてみた。


黒木『なんでって…話したかったからに決まってるじゃん』


ニコニコ笑ってるけどその笑顔が逆に怖い。


黒木『桜空ちゃんと付き合ってるのバレちゃったね。』


怖いくらいの笑顔で近づいてくる黒木。

てか…え…!?

今…なんて……

なんで付き合ってる事バレたの知ってんだ…?


黒木『ふふっ。先生〜顔怖いよ?』


もしかして…


蒼『学校に電話やFAX送ったの…黒木?』


よく考えたら黒木にも美姫と付き合ってるのバレてるんだった。

五十嵐たちより黒木の方がよっぽど怪しい。


黒木『そうだよ?』


相変わらずニコニコ笑いながら答えた。

認めるのか。

認めないと思ったんだけど…。


蒼『なんでこんな事…』


「なんでこんな事したんだ。」

そう言おうとした時


黒木『先生が

「好きにすれば?」

って言ったから好きにしたんだよ。』


そういえば…

夏休み前に美姫との事言うって言った黒木に

ついそんな事言ったんだった。

でもまさかこんな事するなんて思わなかった。


黒木『…嫌いになった?』


上目遣いで俺の顔を覗いてきた。

…「嫌いになった?」か…

正直に言えば

「好き」ではない。

でも「嫌い」と言うわけでもない。

「嫌い」と言うよりも

「怖い」の方が強い。

と言うか…

嫌いでも生徒にそんな事言えるわけないだろ。


蒼『…そんな事ないよ。』


それが今の俺に言える精一杯の優しさだった。

でも…


黒木『じゃあ…私と付き合ってください。』


「そんな事ない。」

と言った途端黒木の表情が明るくなってそんな事を言い出してしまった。


蒼『ごめん無理。』

黒木『えぇ〜即答!?
もう少し考えてよ。』


即答で断ると口を尖らせ頬を膨らませて文句を言っている。


黒木『…桜空ちゃんがいるから?』

蒼『……。』


「そうだよ。」

と言いたい。

でもバレてるからと言っても認める訳にはいかないだろ。

何も言えず黙ってると


黒木『でもさっき嫌われちゃったね。』


そうだった。

さっき言い合いになって怒って出て行ったんだった。

よく考えたら100%俺が悪いよな。

美姫は俺と付き合ってるのバレないように嘘をついてくれて

五十嵐もその嘘にのっかってくれて

そのおかげで校長にも信じてもらえたのに…

本当に俺…何してんだろ。

早く謝らないと。


黒木『先生…』

蒼『悪いけど俺仕事あるから…もう帰んな?
下校時間過ぎてるし。』


話しかけてきた黒木の言葉を遮り帰るように言った。

黒木がいたら美姫に連絡する事もできないし…

何されるかわかんないし…。


黒木『…はーい。』


まだ帰りたくなさそうに渋々と保健室を出て行った。


ふぅ…

やっと1人になれた。

さて…

美姫に謝りたいけど…

どうしようか…。

直接が1番だしそうしたいけど…

2人で会ってるところを誰かにみられたら困るし…

ついさっき校長に信じてもらったばかりでそんなところみられたら今度こそやばい。


…電話するか。


という訳で急いで仕事を終わらせ電話する事にした。