星に願いを~たくさんの幸せをありがとう~




~拓真 side~


美姫が戻ってくるまで

落ち着かずそわそわしてると



美姫『おまたせ。』


そう言っていつもの笑顔で帰ってきた。

いや…これは「いつもの笑顔」じゃない。

美姫の目…

わかりにくいけど少し赤い。

泣いたのか…。

アイツと…

紺野と何があったんだよ。

まぁ聞いても答えてくれないか…。


美姫『行こっか。』

拓真『あぁ。』


学校からの帰り道―

俺たちはいつもの他愛もない会話をして歩いていた。

その間も美姫が紺野の話をする事はなかった。

普通にしてるつもりかもしれないけど

俺からみたら泣きたいのを我慢して笑ってるようにしかみえない。


美姫『じゃあ…』

拓真『…じゃあな。』

美姫『うん。明日ね。』


家の前まで来て俺たちはわかれ

美姫の姿が家の中に消えていった。


今頃美姫はどうしてるんだろう。

きっと1人で泣いてるんだろうな…。

そんな事を考え美姫の家のドアを見つめていた。

なんで止めなかったんだろう。

美姫が1人になったら泣くのわかっててなんで帰したんだろう。

だって…

美姫は泣いたり弱音を吐いてるところを見られたくないのを知ってるから。

でも俺は

もっと弱いところをみせてほしい。

笑顔も泣き顔も全部さらけ出してほしい。

もっと…もっと頼って欲しい。

美姫がどんな事でも言える…

泣きたい時には思いっきり泣ける…

そんな存在に俺はなりたい。

だから…


ピンポーン


気がついたら美姫の家のインターホンを鳴らしていた。


『……』


出てこない。

居留守する気だな。


拓真『美姫ー?入るよー?』

美姫『…拓真!?ちょ…ちょっと待って!
今行くから!』


すっげー慌ててる。

きっと泣いてたのバレないように
必死に隠そうとしてるんだろうな。

しばらく待っていると

中からパタパタ小走りしてくる音が聞こえ


ガチャ


美姫『どうしたの?さっきバイバイしたばっかなのに…。』


ドアから顔を出し不思議そうな顔の美姫。

…やっぱな。

美姫の目…赤いし少し腫れてる。


拓真『中入っていい?』

美姫『??いいけど…どうしたの?』


部屋に上がりソファーに座ると


美姫『何か飲む?コーヒー?紅茶?』

拓真『もういいよ。』

美姫『え?何が?』


もういいよ。

そんなに無理して笑わなくて。


ギュッ


拓真『もう1人で頑張んなくていいから。』


そう言って強く美姫を抱きしめてた。


美姫『…頑張ってないよ?』


俺に抱きしめられながら小さく呟く美姫。

ほんと…こういう時の美姫は素直じゃない。


拓真『強がるなよ。』


俺の前でまで強がんなくていいんだよ。


美姫『強がってないもん。』


中々認めないな美姫さん。

それなら…


拓真『ふーん…じゃあこれは?』


まだ少し涙で湿っている目元を指差すと


美姫『……汗?』


いやいや…

汗じゃないだろ。

てかなんで疑問系…?

ツッコミどころ満載ですよ美姫さん。

…でもここは合わしてあげますか。


拓真『へぇ…じゃあもっと汗だしていいよ。』

美姫『服ビショビショになっちゃうよ?』


クスクス笑いながら俺の服を摘んでいる美姫。


拓真『いいよ。』


そう言って美姫の頭を俺の胸に押し付けると


美姫『………グスッ…』


声を聞かれたくないのか声を押し殺して静かに泣き始めた。

しばらくするとだんだん息が荒くなってきてしまった。


美姫『…はぁはぁ……はぁ…』

拓真『ほら深呼吸して?
吸って…吐いて…
ゆっくりでいいから。』


苦しそうな美姫の背中をさすって深呼吸するように声をかけた。

この状態がしばらく続きやっと静かになったと思ったら


美姫『……ふふ。』


さっきまで泣いてた美姫が急に笑い出した。


拓真『どうした?』

美姫『みてこれ。』


そう言ってさっきまで泣いてた赤い顔を上げ

俺の服を指さしている。


美姫『拓真の服ビショビショだね。』


面白そうにケラケラ笑っている美姫。


拓真『ほんとにすごいな。』

美姫『おもらしみたいだね。』


誰のせいだと思ってるんだよ。

…まぁ笑ってくれるのは俺も嬉しいけど。


拓真『…で紺野と何があったんだ?』

美姫『……。』


そんな簡単には教えてくれないか…。


美姫『蒼が悪いんだよ。
電話やFAX送ったの拓真たちって言ったんだもん。』


ほっぺを膨らませて怒っている美姫。

まぁ…疑われても仕方ないか。

2人の事知ってるの俺たちくらいだし。

美姫も俺の事疑って…


美姫『ほんとムカつく。
拓真たちがそんな事するわけないのにね!』


…なさそうだな。

ほんと…お人好しというか何というか…。

でも嬉しいな。

信じてくれてる事もそうだけど

それ以上に

紺野に反論してまで俺たちの味方してくれた事が何より嬉しい。

紺野より俺たちのほうが大事だって言ってくれてる気がするから。


美姫『しかもねわたしが

「拓真たちがそんな事するわけない。」

って言ったら

「そんなに五十嵐の味方するなら五十嵐と付き合えば?」

って言ったんだよ!?』


口では怒ってるけど

その目には涙を溜めて

辛そうに笑う美姫をみてると切なくなってくる。


美姫『あは…っ…ごめんね。
なんかまた汗出てきちゃった…。』


目から溢れる涙を拭いながら

必死に笑顔をつくって誤魔化している。


だからさ…

なんでそんな我慢すんの?

辛いなら辛いって言えよ。

泣きたいなら思いっきり泣けよ。

なんで…

なんでお前は昔からいつもそうなんだよ。

そんなんだから目が離せないんだよ。


美姫『…嘘でもあんな事言わないでほしかった。』


あんな事…

「俺と付き合えば?」か…

俺だってできればそうしたいよ。

でも…

俺じゃダメなんだよ。

美姫はお前じゃなきゃダメなんだよ。

頭ではちゃんとわかってる。

だけど…


拓真『…ならほんとに俺と付き合う?』


気がついたらそう口に出していた。

美姫が俺の事好きじゃないなんてとっくにわかってる。

それでも俺は美姫が好きだから…

アイツよりも

紺野よりも美姫が好きだから。

俺なら絶対に泣かせない。

だから…

1回でいいから俺と付き合って…


美姫『拓真…?そんな真顔で言われたら冗談ってわかりにくいよ?』


クスクス笑いながら俺の顔をのぞき込んでくる美姫。

…冗談……か。

本気なんだけど…

でもそんな事言ったらこの後気まずくなるし

今までの関係ではいられなくなる。

それだけは嫌だ。

だから…


拓真『あ、やっぱ?
さすがの美姫も冗談ってわかったか。』

美姫『そこまでバカじゃありませーん。』


よし。これでいい。

いつもどおりの俺だったよな…?

そのおかげで美姫の目からは涙も消え2人で笑いあって話せた。


拓真『…そう言えば今日俺んち来れば?
母さんが連れてこいってうるさいんだよ。』


俺の母さん…

美姫の事娘のように大事に育ててきて

今じゃ息子の俺より美姫の心配ばっか。

毎日のように帰ると

「美姫ちゃんは?」

「なんで連れてこないのよ〜。」

その繰り返し。

さすがにうるさいし

俺も美姫がいてくれたほうが嬉しいし…


美姫『じゃあ…お邪魔しちゃおっかな。』


という事で俺の家に行くことになった。