「ただいま………」


リビングでお母さんがソファでテレビを見ていた。


お母さんは、私が帰ったことに気付いていないらしい。


私は、気づかれないようにそっとリビングを通り過ぎると、二階にある自分の部屋へ走った。


「はぁ………」


“私から蒼を取らないで!”


奈津ちゃんの声が、頭から離れない。


好きな人ができると、こんなに些細なことで悩んだりするんだな。


目を閉じると、蒼くんの太陽みたいな笑顔が浮かぶ。


伝えられたらいいのにな………“好き“って。