そして準備が整うと、私はストレッチャーに移され、手術室に向かった。
怖くない。
これが終われば、退院してまた学校に通える。
必死で自分にそう言い聞かせたけれど、自分でも分かるくらい私の手は震えていた。
「詩音、大丈夫だ。安心しろ」
お兄ちゃんが私の手を握りながらそう言った。
手術室の前につくと、私はお母さんとお父さん、千尋、舞、そして歩実に手を振った。
「詩音!」
歩実が心配そうな顔をして、私の名前を呼んだ。
「大丈夫。帰ってくるから、心配しないで」
私は、それだけ言うと手術室に入れられた。
大丈夫。
お兄ちゃんを、信じるんだ──────。


