夢の続き

「さて・・・もう、帰るよ」


特に思い出話をするわけでもなく、僕は彼女のレースでの話を聞き、彼女は僕の仕事の話を聞いてくれた。

彼女の言うとおりあのままで終わるよりも、最後と分かっていても少しだけ今までに近い二人で終わることができて良かったと思う。


「もう帰るの?」


階段を降りると、お母さんが台所から顔だけ出してきた。

台所から漂ってくる匂いからすると、この家の今日の夕食は酢豚だろう。


「はい。

ありがとうございました」


お母さんからは笑顔が返ってきて、横にいた彼女からは軽く脇腹を小突かれた。

「お邪魔しました」ではなく「ありがとうございました」を使った意図を、どうやら彼女には見抜かれてしまったらしい。


「ただいま」


そうしていると玄関が開き、彼女のお父さんが帰ってきたようだった。



彼女はお父さんへと駆け寄り、荷物を預かりながら色々と話をしている。その間、お父さんは僕のほうをじっと見つめ、僕はその視線に耐えられず逸らしてしまった。