美穂が福岡でレースを終えた翌日の夜、僕は彼女の家にいた。
-大事な話があるから会おう-
レース中にも関わらず用件だけを簡潔にメールを送信し、彼女からも昨日の夕方に空港と到着時間だけ簡潔に書かれたメールが返信されてきた。
僕は有里香さんとシゲさんに何度も頭を下げ、すぐに休暇を願い出た。
忙しい時期なうえに翌日とあって、二人は簡単には了承してくれなかった。
それでも僕は譲れなかった。
初めて二人に盾突くような口調で半ば強引に押し切り、翌日僕は彼女を空港へと迎えに行くことにしたのだ。
「別れよう」
空港から電車を乗り継いで彼女の最寄り駅に着き、駅から少し離れた河川敷へと出てそこにあるベンチに座って僕は重い口を開いた。
彼女は俯いたまま何も話さず、それに気に掛けないふりをして空を見つめる。
このままだと僕は、二人の女性を悲しませることになる。
二人とも悲しませたくないという選択は、逆に彼女たちにとって最も悲しませることを僕なりに理解した答えだった。
僕は逞しく生きる美穂よりも、今にも消えてしまいそうないちかの傍にいようと決めたのだ。
「・・・分かった」
彼女は理由も聞かずに、僕の理不尽な申し立てを聞き入れてくれた。
-大事な話があるから会おう-
レース中にも関わらず用件だけを簡潔にメールを送信し、彼女からも昨日の夕方に空港と到着時間だけ簡潔に書かれたメールが返信されてきた。
僕は有里香さんとシゲさんに何度も頭を下げ、すぐに休暇を願い出た。
忙しい時期なうえに翌日とあって、二人は簡単には了承してくれなかった。
それでも僕は譲れなかった。
初めて二人に盾突くような口調で半ば強引に押し切り、翌日僕は彼女を空港へと迎えに行くことにしたのだ。
「別れよう」
空港から電車を乗り継いで彼女の最寄り駅に着き、駅から少し離れた河川敷へと出てそこにあるベンチに座って僕は重い口を開いた。
彼女は俯いたまま何も話さず、それに気に掛けないふりをして空を見つめる。
このままだと僕は、二人の女性を悲しませることになる。
二人とも悲しませたくないという選択は、逆に彼女たちにとって最も悲しませることを僕なりに理解した答えだった。
僕は逞しく生きる美穂よりも、今にも消えてしまいそうないちかの傍にいようと決めたのだ。
「・・・分かった」
彼女は理由も聞かずに、僕の理不尽な申し立てを聞き入れてくれた。



