夢の続き

よかった・・・


そう言いたいのだがあまりにも全力で走ったために、呼吸するのに精一杯で言葉が出てくる余裕がなかった。

それでも視線だけは外さずに彼女を捉え、逸らさないように必死で顔を上げ続けた。


「ごめんなさい」


溢れる涙を拭おうとした右手の手首を見て、僕は彼女が謝る理由を知った。



「私・・・

私・・・」


「・・・うん」


「生きることが怖くなって・・・

でも、手首に触れた瞬間、それすらも怖くなって」


彼女に歩み寄り、できるだけ優しく、けれどもしっかりと包帯で巻かれた右手首を握った。

彼女のことを思うと、心が痛むという言葉だけでは足りないくらいに胸が痛くなる。

気を緩めると顔を歪めてしまうくらいに締めつけられているように痛く、僕はその痛みと涙を必死で堪えた。

目の前にいる彼女の痛みは、こんなものではないはずだから。


「よかった」


彼女の右手首を包み込みように両手で持ち、何度も擦った。

彼女の涙は留まることなく、頬から滴り落ちた。

それが擦っている僕の手に触れたとき、逃げ道をしっかりと歩くべき道にすることを決断した。