夢の続き

「おじちゃん、いる？」


準備中の看板など無視し、ノックもせずに扉を開けて入る。

こんなことが許されるのは、恐らくこの店ではこの人だけだろう。


「おお、有里香ちゃん。久し振りだね」


そして、そんな客に対してこんなにも友好的に迎え入れてくれるのは、この『パンチ』の店主・武藤敬一さんだけだろう。


「おっ、謙ちゃん。今日は仕事休みじゃなかったのかい。

わざわざ、休みの日に悪いね」


そう言いながら手際良く水を差し出す姿は、とても表に準備中の看板を掲げている店とは思えなかった。


「あんた、まだ来てたんだ」


「当然でしょ。もっとも、流石に夜だけですけど」


もともとは夜しか営業はしていないのだが、開店からの常連である彼女の願いで特別に表の看板を準備中にしながら昼も出して貰っているのだ。

しかし、会社から結構離れているため、ここで昼食を取った日はいつも走って会社へと戻った。

彼女が退社してからは、僕はそのリスクを避けて夜だけの通いになっている。