夢の続き

電話の向こう側は本当に静かで、そこには誰もいないのではないかと思えてしまうほどだった。

しかし、こうして着信があるということは、紛れもなくこの電話の向こう側には着信相手である彼女がいるはずだ。


「俺な、今日の仕事で・・・」


僕は話した。



なんでもいい。

なんでもいいから、この静けさのままではいけないと思った。

強引にならないように、それでいて止めないように僕は必死だった。



彼女のほうは相変わらず何も話さず、僅かに電車が出発する音が聞こえたような気がしたくらいだった。

それでも、僕は彼女が口を開いてくれるまで、自分の話をした。



窓から見えるくっきりとした月が、妙に邪魔もののように思えてくるのはどうしてだろう。

焦ってくると他人に八つ当たりをするという行為を何度も見てきたが、今の僕は月に八つ当たりでもしているのだろうか。


ポケットに入れていたら、勝手に鳴らしていただけ


そうあってくれと強く思ったときだった。


「・・・ごめんなさい」


冷たく、震えているように聞こえる声に、僕は思わず立ち上がった。