夢の続き

それだけではなかった。



ただ勉強をしているだけなら、彼女ももしかしたら我慢できたのかもしれない。

その勉強をしている目的が、違う女性を少しでも助けたいという思いだから。



美穂にとって、僕のなかには藤堂美穂のほかに叉渡いちかという女性がいる。

そして、叉渡いちかの存在が大きくなっていくということを、僕は気付かなかったが彼女はそれを気付いていたのだ。



カフェから駅への道の途中で、僕は二度彼女を抱き締めた。

彼女は二度とも僕の背に手を回して、力強く締めつけてきた。

顔を胸に埋めていたので表情は分からなかったが、涙は流していないにせよ笑顔ではないことは分かった。


「明後日、福岡のレースの前検日だから明日には向かうわ」


レースの間は彼女たちの外部への連絡手段は一切遮断される。

競艇が公営競技である以上、八百長などを防止するため仕方がないことだと二人とも分かっている。

今までは苦に感じなかったことも、今回はそれが重く圧し掛かってくるようだった。