夢の続き

僕たちの様子を見ていたのかどうかは分からないが、おじちゃんは僕たちのテーブルの鉄板に油を注いで火を点けにきた。


「プロ入りして・・・」


火を点けたおじちゃんは、どこか遠くを見るような目で口を開いた。

忙しそうな店内だがそれでも僕たちに話し掛けるということは、よほど大切なことでも伝えたいのだろう。


「一年目のキャンプだった。

それはもう凄い選手ばっかりで『これはとんでもない世界に入ってしまった』って思ったよ。

そして、プロ入りを反対した人たちの顔を思い出して、あのときは正直に言うと後悔した。

でも、今は違う。

四年間で一軍には上がれず、それどころか二軍でも通算で三十試合くらいしか投げていない。

だけど、とにかく必死で頑張った四年間は何事にも変えられない掛け替えのない宝物のような時間だったし、人生で最も中身の濃い四年間だったと思う。

今となってはあのときの自分を褒めたいし、プロで四年間頑張って良かったと胸を張って言える。

偉そうなことを言える立場ではないけど、謙ちゃんもそういう道を作れるように頑張って」


厨房へと戻るおじちゃんの姿が、僕の目にはマウンドに向かうユニフォーム姿に見えた。