夢の続き

「ところで二人はなんで勉強しようと思ったの」


運ばれてきた生ビールを初めて口に入れようとしたところで、彼からの質問が飛んできた。

聞かれるとは思っていたが回答を僕は用意していなかったので、口につけることなくジョッキを元の位置に戻した。


「私は・・・ね」


二人が納得するような回答を必死で考えようとしたとき、有里香さんが神妙な面持ちで口を開いた。


「ぶっちゃけね、私は転職を考えているよ。

もともと独立の気持ちが強かったから。

でも、今の仕事関係ではちょっと厳しいと思って。

そんなこと考えていたらテレビで心理カウンセラーの特集番組がやっていて、それに凄く感動したんだよね。

格好悪い動機かもしれないけど、これが私の本当の動機だから仕方ないよね」


僕が用意しようとしていた回答は周りにとっては正解と思われても、心の中と向き合えば僕の正しい回答ではなかった。

僕の心の中の回答を話せば、格好悪いのかもしれない。

でも、彼女はそういうふうに思っていても、自分の心の中の回答をありのままに出した。



最後は恥ずかしそうに話す彼女を見て、さっきまでの自分が惨めに思えた。