夢の続き

「だって、私もこれでやっているから」


「えっ」


「あんたたちには言っていなかったけど、私も春から心理カウンセラーの勉強をしているの。

これだったら評判もいいし、分からないことがあったらいつでも私に聞けるから便利じゃない」


自慢げに言い放ち、彼女はジョッキに口をつけた。



一瞬だけ僕は頭の中が混乱しかけたが、アルコールをまだ摂取していないおかげで混乱せずに笑みがこぼれた。


「先輩も勉強してたんですか」


嬉しそうに彼女に向かって言うと、ジョッキを口から離さずに笑顔でピースサインをこちらに向けてきた。

シゲさんがその隣で、彼女が手に取った通信教育の資料を見ながら「ふうん」と声を漏らしていた。


「ちぇ、俺だけ仲間外れかよ」


彼女がジョッキをテーブルに戻したのを見計らって、彼は冗談で笑い飛ばした。


「あんたも勉強すればいいじゃない」


シゲさんの肩に腕を回し、目の前に資料をひらつかせた。

資料と腕を優しくゆっくりと払いのけて、小さく息を吐きながら手を目の前で組んだ。


「俺はそういう柄じゃないの」


皮肉とかそういうものではなく、その言葉は彼らしさを際立たせた。

こういうときに場の空気に流されないというところが、堂岡茂という男だった。

僕も有里香さんもそれを知っているからこそ、「やれよ」などと言って彼をからかった。