おじちゃんがサービスしてくれるのは、これが初めてではない。

というよりは、有里香さんが会社にいたときから数えれば、サービスしてくれる回数のほうが圧倒的に多いだろう。

今日も例外ではなく、恐らくは地獄の三週間の労いをしてくれているのだろう。

それを断るのは、野暮なものだということだ。


「俺よりもお前が作れよ」


最初の肉を鉄板に乗せながら言葉を発し、少しだけ「しまった」というような表情に変わる。

肉が焼ける音と煙が一斉に上がり、僕は鉄板に視線を向けたまま気付かないふりをすることにした。


「焦ることないよ」


つい先ほど肉を持ってきたばかりで、それなのにもうおじちゃんがテーブルに来たので二人して驚いた。


「今日は二人だけだからね。

たまには一緒させてもらうよ」


肉は最初のうちに全て用意したようで、カウンターに出す順番通りに綺麗に並べてあった。

サービスはしょっちょうだが、こうして同じテーブルに着いて話すことは滅多にない。

そういうこともあり僕は嬉しくなり、隣の椅子を引いて座るように誘った。


「飲み物は・・・」


「セルフでしょ」