そんな僕のジョッキとは違い、彼のジョッキにはお茶なので泡など立っているはずもなかった。


「まあ、な」


「まさか、彼女でもできたんですか」


言い切るのとほぼ同時に、彼の掌が僕の頭に直撃した。

それが予想以上に大きい音を立てたようで、おじちゃんがカウンター越しに笑っているのが見えた。


「なんで、お前はそういう発想しかできないんだよ」


もう一発直撃したところで、おじちゃんがカウンターから出てきて、最初の肉がテーブルの上に並んだ。

しかし、皿の中身は僕たちが注文したよりも明らかに多いようだった。


「僕も彼女ができたのかと思ったよ。

シゲちゃん、もういい歳になってきたから、そろそろかなって。

そうだと思って、奮発しちゃったよ」


やはり僕たちが注文したよりも多く盛ってくれたようで、シゲさんは「参ったな」という都合の良い返事をして、僕は「ありがとうございます」と素直にお皿を受け取った。