夢の続き

「今の駅だと乗換があるので、今度は乗換がないところがいいと思っていて。

でも、ここは生活するには僕では賑やか過ぎるので、八王子辺りにしようかと」


「何?私に近づいてくるの。

確かにここよりは賑やかではないけど、八王子だって賑やかといえば賑やかだよ」


八王子という言葉を出した瞬間に、彼女は驚いたような表情を見せた。

先ほど、「出てきても八王子まで」と言っていたので、受け流されずに何かしらの反応はあると予想していたが、これほどまでに驚かれるとは。


「確かに。

でも、前に仕事で行ったときに直感したというか・・・『あっ、俺、ここがいいかも』って思ったんです。

何か、こことは違った賑やかさですよね」


彼女は少しだけ溜息をついた。

それでも表情は穏やかで、僕の直感を信じてくれたのであろう。



ほんの少しだけ、店内に音が無くなり静かになった。


「まっ、私に反対する権利は無いからね。

まだ、契約は半年以上残っているんでしょ?

じっくりと下調べして、しっかりと決めなさい」


姉御肌だった彼女も、やはり家庭を持つと母親だ。

どこか今の言葉と態度も一緒に働いていたときとは違い、母親のように接せられて言われたような気がした。