夢の続き

「私はいつでも、卒業した今でも、先輩のことを考えていますから。

卒業してからはしばらく我慢していたけど、あの人と別れたのなら我慢しなくてもいいですよね」


動かないのではない。

まるで蛇に睨まれた蛙のように、僕はその場から動くことができなくなった。


「私、先輩のためなら何だってしますよ・・・

悪い虫がいるのなら、駆除だってします」


悪い虫



僕は真っ先にいちかの顔が浮かんだ。



きっと、夕凪にとってそれは僕の周りにいる女性のことだ。



今の彼女には僕以外など見えておらず、そんな状態だから何を言っても今は無駄だろう。


「そういうのは・・・大丈夫だから」


何を言っても無駄だと分かっていても、この場をどう切り抜ければいいのかは分からず、僕はただ彼女の言葉に返答するだけだった。



どういう言葉を投げ掛ければ、この場を上手く切り抜けられるだろう。



頭の中はそれだけしか考えていないのに、それに対する言葉や行動はちっとも出てくることはない。


「先輩・・・部屋に入らないんですか?」


彼女が一歩、また一歩と僕に近付いてくる。