夢の続き

「な、なんだ、そんなことだったの」


僕としてはその言葉が予想外だったのだが、考えてもみれば別に電話でも構わないような相談のような気もしないかもしれないと思うようになってきた。

しかし、それではわざわざ彼女にここまで来てもらった意味が無くなってしまうので、多少なりとも強引にいくことにした。


「なんだとは、なんですか。

あの部屋も大学二年のときから住んでいるし、今年で八年になる。

次、契約更新したら十年で、さすがに十年も同じ部屋にいるのも、と思って」


他にも理由はあるし、それらは一つではない。



万に一つ二人にこの引っ越しを止められるようなことはないだろうと思うが、僕は二人の反応を恐る恐る見つめていた。

おじちゃんは相変わらず仕込みを続けていて、彼女は右手を口元に当てて何か真剣に考えてくれているようだった。


「うん、いいんじゃない。

さすがに十年もいると、不動産とか大家もうるさそうだしね」


その言葉に少しだけ安堵感を覚え、肩が少しだけ軽くなったような気がした。

空になっていた自分のグラスに水を注ぎ、彼女のグラスにも注ぎ足した。