夢の続き

ちらりと彼女がこちらに目をやり、目が合ったので僕は慌てて二人がいる並木道に視線を外す。

それを見て、彼女は小さく笑った。


「ここ、春になったら桜で満開だろうね」


その言葉を聞いて、彼女の笑いは小さいものではなくなった。

僕は植物には疎いということと、彼女の笑い声でどうやら間違えたのだと気付いた。


「これ、イチョウの木です。

秋にならないと、満開にはなりませんよ」


「そっか・・・じゃあ」


言い掛けたところで、僕は止めた。



彼女は気にも留めずに、再び目的地へと歩き出した。

そのことが僕にとっては、有り難いことだった。


今年の秋は一緒に紅葉を見よう


何気ない一言だ。



その何気ない一言が、僕の口からは出てこなかった。



出していいのか迷ってしまった。



結局はどうしようもないもどかしさと、悔しさばかりが僕の胸に残ってしまう。



並木道を抜けると、今度はこの丘を一気に下る下り坂が目の前に広がり、その下を覗き込むようにして見る。

そのくらいこの坂は角度があり、上ることだけでなく、下るのにも一苦労しそうな坂だった。