夢の続き

電話の向こう側と、こちら側、どちらも静かすぎる時間が速く過ぎてしまえばいいのにと思う。


「・・・別れたんですよね」


電話なので相手の表情などは分からない。

それでもその言葉からは、隠しきれない興奮がこちらに伝わってくるようだった。


「どうして、それを・・・」


そのとき僕は再び背筋が伸びた。

いや、伸びたというよりは、背筋が凍ったという表現がどちらかというとしっくりくる感じだった。



電話の向こう側で、不敵な笑みを作る彼女の姿が脳裏に浮かぶ。

恐らく、それは誰かから聞いたということではなく、彼女が自ら知ったということなのだろう。


「今日は留守のようなので、これで十分です。

先輩、私はいつでも先輩を愛していますよ」


かなり興奮した状態で電話は切られ、僕は大きくため息をついた。



今の言葉からすると、彼女はどうやら僕のアパートの前まで来ていたのだろう。



あんなに綺麗な明かりを放っていた月が雲に隠れ、月明かりを失った部屋は真っ暗に近い状態になった。

その暗闇で夕凪穂香の姿を思い描くと、体がひどく重たくなっていくようだった。



そして、一つの不安が出てくる。



いちかが危ない。



夕凪にいちかの存在が気付かれているかもしれない。

いや、気付かれていると思っていたほうがいいだろう。

そうだとすれば、必然といちかが何かしらのことをされることは明白だ。



迫りくる現実に、僕の頭の容量はパンクしそうだった。