「スエード!!」



自分の叫び声に驚く。
気づいたら飛び起きていた。

目の前は、見慣れた自分の部屋。



しばらく夢ということに気づけなかった。
時計の音がコチコチと聞こえる。

風の音もない、生き物の鳴き声もない。

さびしいほど静寂な空間。


「…また、夢だ。」


ぽつりと呟く。
あれから、スエードと会話は一度もしていない。

彼は私が話しかけようとすると、徹底的に拒否した。
あるときは暴力で抑止してきたときもあった。
そのときは、ジャンがとめてくれた。でも次第に私も暴力で返すようになった。
今では町一番の喧嘩相手だ。

もう喧嘩すらしないが。


とりあえず落ち着こう。


引き出しから箱を取り出す。
簡単に言うと煙草である。しかし、中身は無害な薬草なので、リラックス効果が得られるわけだ。無害だよ無害。


そっと火をつけてくわえる。


ハーブの香りとともに、気持ちのもやもやが煙で現れる。
いつもはまっすぐに伸びるのに、今日はぐにゃぐにゃと曲がっていた。


記憶の整理だか知らないが、どうして夢なんか見るのだろう。
夢を見たって帰れない。変えることもできない。



煙草を灰皿にいれ、もう一本と手を伸ばす。


「…ありゃ」


中身はもう空っぽだった。