研究所に入ると、ママはさっそくほかの人と難しい会話を始めた。私は黙ってソファに座る。


「やぁミグちゃん」

と、友人のパパが声をかけてきた。


「こんばんわ、ジャンのパパさん。
今日も遅くまで研究ですか?」


「いやぁ…今日はね、打ち上げ!」


打ち上げ?
私は首をかしげた。

すると、ママが笑顔でやってきた。


「ミグ!いらっしゃい」



状況の読めないまま、私は研究所の外へ出た。
研究員の人も楽しそうだ。

なにやら大きくて長い物体が
布を被されて地面に設置されている。


「こ、これって…」

私は息をのんだ。

「せーのっ!」

合図とともに、布がめくれる。



ふわっと、オトツレ草の花粉が舞う。

きらきらと光る青白い粒子

月明かりに照らされ
たたずむその物体は


赤いロケットであった。