「おりひめちゃーん!
今日も三つ編みにあってるネッ」

俺は翌日
いつもより少し早めに出て下駄箱前の
委員長に会えるように登校した。



「おはよう、松岡くん」

彼女は何の気もなしに
いつも通りの微笑みを向けてくれた。

ただやっぱり声が男で
しかもイケメンボイス。




「…」

俺は何も言えず、
ただ黙っていた。

彼女はその原因を少し違うように
とらえてしまったらしく小さな声で
「大丈夫です、言いませんよ」と耳元で言った。


一瞬思考が停止して
クラッときたが
そのまま去って行こうとしたので
思わず腕を掴んでしまった。








「あっあの!」


「!?…?」



彼女は今の状況が全く理解できない
といった表情だった。






「…あの、昨日はありがとう。
すげぇ助かります。」

なんだか
これだけの言葉なのに異様に緊張してしまった。

ちょっと顔も暑くなってる気がする。






「ちょっとぉ
昨日ってどーゆーこと?」

「えー、まさか私ら置いて
いんちょーと遊んでたのぉ?」

「えってかいんちょーって
遊ぶの?」

「遊ぶとかまじ想像できないんだけど(笑)
あっあれじゃない!?公園?」

「おー、めっちゃ似合う!」






昨日一緒にカラオケに行った女子が
群がってきた。

悪気があるのかないのか
委員長に対してちょっと失礼じゃないのか!?
っていうレベルの話を本人の前でしている。






「…」

チラッと横目で見ると
委員長は困ったようにただ笑っているだけだった。






「ごめん、ごめんっ!
昨日マジ腹痛くてさぁ
おりひめちゃんは家帰る途中で蹲ってたオレに
胃薬くれたわけ~

いやー
マジ助かった‼ありがとう」






「えー大丈夫!?」

「腹ピーならしょうがないねぇ
許してやろう」

「まぁ松岡くんだしね、またカラオケいこー」






なんとか彼女たちを
追い払うことができた。







「なんか、ごめん。

悪いやつらじゃないんだけど…たぶん。
あっあと嘘ついちゃってごめん…。」





「ふっ」






彼女はいきなり
吹いた。


「えっなに?どーしたの?」と俺がパニクると
余計笑いだした。






「いや、
私にお礼いったり謝ったりする律儀な人かと思えば
友達なのに"たぶん"って
結構ひどいなぁって(笑)」





彼女は
やっぱりずっと笑っていた。

でもやっぱり
笑い声もイケボだった…。