深井さんと浅井君

そうこうしている内に、キーンコーンカーンコーンと、昼休みの終わりを知らせる予鈴が鳴ってしまった。


…結局、あまり読書が出来なかった。


教室に帰ると、浅井君はまだ懲りずに女子に交際を求めていた。

やっぱり、単なる阿呆だ、浅井君は。


しつこすぎて、その内逮捕状でも出されそうだ。

いや、76%の確率でそれは有り得ないだろうけれど。

それでも、残り24%が侮れない。


「皆席に着いてね~。

授業始めるよ~」


先生が、教室に入って来て、クラスメイト達は一気に静かになった。

あの、浅井君ですら。


「は~い、じゃあプリント配るよ~。

後ろの子に回してね~」


ほわほわとした雰囲気の先生。

文面からして、女性のように思えるが、男性である。

男性である。


重要そうだから、2回言ったが、もう一度言う。


男性である。


彼の名前は、田村公彦(たむらきみひこ)先生。


男性である。


何故、そんなにもしつこく男性である事を強調するのかというと、たまに文面だけだと本当に女性にしか思えなくなってしまうからである。

というか、文面だけじゃなくても、彼は女々しい。