深井さんと浅井君

「ま、いいわ」


そもそも、此処には読書にしに来たのだ。

私は、一番近くにあった席に座り、手にしていた本を読み始めた。


やっぱり、あの浅はか野郎のいる教室とは違って、スムーズに読書が出来る。


「深海さん、本当に読書が好きですねぇ」


何故だか読書に集中している私に、千早が話しかけてくる。


…まあいい。

これが浅井君だったら、ぶん殴っているかもしれないけれど、千早なら許す。


「そうだ!

私のオススメの本読んでくださいよ」

「…?

貴方のオススメの…?

65.32%程興味があるわね」


そう言うと、千早は本棚にあった本を取り出し、私に渡してきた。


「これは…?」

「“ワンタンメンとカルフォルニア”です」

「これはもう既に読んだわ」

「あれ!?そうでしたっけ」


はあ…。

まあ、別に良いか…。

これが浅井君なら100%の確率で飛び膝蹴りを食らわせているわね。


「じゃあこれはどうです!?」


と、彼女が次に、自信満々に渡してきたのは、君色まじっく☆という、明らかに恋愛モノの携帯小説だった。


「…御免なさい。

私、携帯小説は生理的に無理なのよ」

「え!?この物語、携帯小説なのに!?」

「そういうメタ発言はいいから」