独り歩き。





ふと上を見上げれば、空が広がっている。


手をのばしても、すごく遠くて…


亡くなった人を想うとき、人はどうして空を見上げるのだろう?


サンタクロースがいないように。


そこにその人はいないと、わかっているはずなのに。


きっと、理屈ではないんだろう。


私もおばあちゃんを想うとき、空を見上げる。


唯一、私を愛してくれた人。


幼稚園の先生だったおばあちゃんは、よく私を励ましてくれた。


『辛くなったら、泣きたくなったら、大声で泣き喚きなさい。そのうち自分がバカらしくなる。そしたら少しは救われる。』


恥ずかしくて、今じゃもう、できないけれど。


その温かさに救われた。


『人は少しわがままなくらいがちょうどいい。言いたいことを言って、そうやって少しずつ他人をわかっていくんだ。

つくしは少し優しすぎる。もっと求めていいんだよ。優しすぎるといつか自分を傷つけるよ。』


おばあちゃんの言葉が甦る。


「おばあちゃん、私、本当に優しいかな?私はね、自分の心が醜くてイヤだよ。

お姉ちゃんが失恋したときね、本当はいい気味だって思ったの。ひどいでしょ?

ねぇ、おばあちゃん。もう生きる気力がないの。どうすればいい?そっちにいってもいいかな?」


やっとの思いで立ち上がり、フェンスに手をかける。


その瞬間、尽きたはずの涙が少し流れてきた。


その涙を拭うことなく、自分の中で、小さく『さよなら』をした。