見上げれば困ったような笑みを向けてくる

「束縛するとかされるとか一番嫌いな人なんだ」

だから、たぶん無理

そう言ってもう一度ガラスの向こうを見つめる横顔は、少し寂しげだ

「わかんないんじゃない」

見下ろせば章子の強い瞳

「男って基本狼だもの。本気でしるふのことを離したくないって思ってるんなら指輪の一つや二つ惜しまないでしょ」

それで周囲への抑制になるのなら

「心の底から離したくないって思ってくれてるならね」

いまいち自信がないなんて言ったら海斗は怒るだろうか

「行こうか」

沈黙を破ったのは、しるふ自身

駅に着くとちょうど電車が到着するところだった

章子は違う路線の方が近いのでここでお別れ

しるふもこの路線の電車なら地下道を抜ければ海斗のマンションの目の前につく

なんていい立地

「立花」

山岸が口を開いたのは、しるふが改札をくぐるその瞬間