「振り回されてるのはこっちよ」

いつだって捕まらないのは海斗の方だ

「まあ、少しばっかり追い方が人並みじゃないってことは認めるわ」

だからこそしるふを落とせたんだろうけどね



無意識にふと足を止める場所がある

だからって何をするわけでもない

ただガラスの向こうにあるそれを眺めるだけ

時々、もしあれが自分の指にはまったら、一緒に店に足を運べたらどんなにうれしいだろうと

思うことはあるけれども

「しーるふ」

置いてくよー

「あ、うん」

帰り道、章子と山岸と3人で駅までの道を歩いていた

「なになに。どうしたの」

立ち止まったしるふのもとまで戻ってきた章子が後ろから覗き込む

「へえ。指輪かー。彼氏さんに買ってもらったら?」

視線の先に輝く二つのシルバーリング

夜の街灯の小さな光にさえ、きらりと光る

「たぶん無理」

そういうの嫌いな人だからさ