「なんか深みが足りないってうか、味が薄っぺらいというか」

とにかく何かが違うのよ

返されたカップを睨み付けるしるふの頭を見下ろして

「それたぶんさ」

と言いつつ机の上に置いていたパスポートをコートのポケットに入れる

「うん」

振り返れば言葉の続きを待つしるふの真っ直ぐなブラウンの瞳

「…帰ってきたら教える」

「何それー。今の沈黙で絶対説明終わった!」

「飛行機間に合わない」

そう言ってしるふの横を通り抜ける

「絶対だよ」

約束だからね

靴を履いて振り返ると少し高い位置から不機嫌そうに見下ろすしるふがいる

「ああ」

「あ、あと私22日同級会だから」

お迎えは出来ません

「駅前だっけ」

「うん」

「迎えに行く」

「ん?」

今、なんと?