初恋はアイドルでした。

「ありがとうございました。」

私はお釣りを貰い店を出た。

((ああいう本を読む人は頭が悪い人なのよ))

お母さんの言葉で我に返った。

どうしよう。
やっぱり怒られるよね。

そんなモヤモヤを抱えて公園のベンチに座った。

ここで読んで捨てちゃおうかな。
そう思い雑誌を開く。

【今回の表紙担当は萩谷優也kun♡】

そう書かれたページに目をとめた。

はぎやゆうや。

はぎやゆうやって言うんだ。
いい名前。
名前もかっこいいなんて。
そううっとりしていたら、またあの懐かしい香りがした。

「その子人気なの?」
えっ?思わず振り返る。

黒い帽子をかぶってマスクをしている人が立っていた。
もしかして。はぎやゆうや?
そう思ったけどきっと違うよね。

「ねえ?俺の話聞いてる?」

「私はかっこいいと思わない。
なんか、自分に酔ってるみたい。
すごく生意気にみえる。」

やだ。口から出たのは全く思ってもないこと。
本当は生意気になんか見えないし、すごくかっこいいし人気。

「ふーん。生意気か。」

違う違う。
そんなんじゃないよ。

あの香りが遠くなる。
気づけば彼はいなかった。