二十年後のクリスマスイブ

 真由美は通勤着のままの自分が少し恥ずかしかったが、すぐに桐人はそれを察し(自分もカジュアルなジーンズ姿)とおどけたポーズを取ってくれた事で表情に笑みを自然と出せた。

「さぁ、行くよ!」

 桐人は、真由美の右手を、そっと自然に握りホテルの玄関を堂々と入りフロントへ向かった。
 この自然な流れは、流石にNo.1ホストの風格だった。
 フロントの係と軽い冗談を交わして桐人は鍵を受け取ると、真由美の肩に今度は腕を回しエレベーターの在る方へ向かった。

「こういう所によく来てたの?…私には場違いな気がする…」

 クラブでのホスト姿しか見た事が無かった真由美が知らない世界を垣間見えた事に驚きは隠せなかった。
 まだ幼い頃、夢に見た白馬に乗った王子様が迎えに来てくれたシンデレラの気分は心地良いが、心にはこういった、桐人が廃業する流れを創ったのが真由美自身と云う後ろめたさも覗いていた…

「桐人さんが辞めて哀しむ人、沢山居るんだろうな……」

「決めた事に後悔は無いよ…」

 桐人は真由美の言葉に表情を変える事無く笑った。

「さぁ、最期の夢物語が始まるよ!」

 エレベーターに乗ると空に一番近い場所へと駆け上がった。