男たちが部屋を走り去ったあと、朔夜はむくっと起き上がり、切れた唇を拭った。


「ボーッとすんな。俺らも行くぞ」


「え?え?でも旦那さん怪我してるやん…!?」


「バーカ。ンナのケガのうちに入るか」


むしろ怪我をしていない私のほうが震えていて、旦那さんに引っ張られ部屋をあとにした。


ホテルの階段を下り、裏の出入口から外に出て、ビルのすき間に身を隠した。


「やっぱり病院に行った方がええんとちゃう?」


「舐めときゃ治る。それより車呼んでるから行くぞ」


「え?」


ふたたび手を引かれて付いていくと、路地をいくつか曲がった道端に、鬼塚さんのベンツが止められていた。


「また派手にやりましたね」


私と朔夜を乗せ、車が静かに滑り出すと鬼塚さんはため息をもらした。


「ご自分の立場を考えて、あまりやんちゃは控えて…」


「ウルセー鬼塚、降ろすぞ」


まるでいつもの事と言わんばかりの鬼塚さん。


「それよりもうちが拉致られたこと何で分かったん!?」


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