たまたま気が向いて、車ではなく電車で帰宅しようとした放課後。事件は起こった。


私は電車というものに生まれてこのかた乗ったことがなくて、ぜひとも乗ってみたいと思っていた。



ひとりで切符を買い、キヨスクに寄ろうと駅を歩いていたら、同じ学校の制服を着た男子にぶつかった。


いや、ぶつかったと言うよりも、ぶつかってこられたような。


「痛ッテ!!」


私より二周りは体が大きいのに、その男はぶつかった腕を大げさにさすってみせた。


「あ、ごめん」


「ごめんじゃねーよ!?どこ見て歩いてんだよこのブス!」


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