「なに警戒してんだよ?まな板のくせに」


「ま、まな板ァ!?それってうちの胸のこと!?今かんけーないやんっ!?」


新婚初夜に、思いきり胸を鷲掴みされたことを思い出した。


なんやねんホンマ、天使みたいな顔して腹立つ男やわぁー!!


そりゃあんたには"お方様"がいっぱいいてるから、溜まってへんのやろけど!!


「そんで、学校では偽名で通してんの?」


気をとり直して話を戻す。旦那さんはマルボロに火をつけた。


「つーか"紫月白夜"の戸籍を買った」


「戸籍を買った?」


「世の中にはよ、はした金の為に、内臓でも戸籍でも売るヤツはウヨウヨいるだろ?」


そう言えば、尊兄ちゃんも『どんな人間にもたいてい値段はつく』って言っとったな。


尊兄ちゃん。


……うちがまな板で色気が足りひんから、抱いてくれんかったんやろか…?


「なにボーッとしてんだテメ」


「あっ、いや、別に!」


あかんあかん。油断すると尊兄ちゃんのことばかり考えてしまう!


そんな私を朔夜はジッ…と見つめた。


.