よく透る若い男の声やった。


そしてそれはさっきまでとなりに座ってた、毛むくじゃらの大男からは、想像もつかない良い声だった。


「………??」


思考が停止し、ピタッと固まってると、再び朔夜は声をかけた。


「おい、いつまで下向いてんの?こっち向けっての!」


「……はっ!?」


反射的にガバッと顔を上げた。


するとそこにいたのは……。


薄い色素のきれいな瞳。


ながい睫毛にくっきりした二重瞼。そして筋の通った鼻に薄い唇。


肌は陶器のように美しく、オレンジの柔らかそうな髪をした……


今まで見たこともない程、美しい顔の男やった。


それが目の前にいた。そう息がかかるくらいの距離に。


「……っ!?…き、きゃぁぁぁっ!?アンタ誰やっ!?どっから入ったんっ!?」


びっくりして飛び退くと、その美しい男はシーっと長い人差し指を口にあてて、


「誰って……朔夜。西園寺朔夜」


白い歯をみせ、不敵にニヤッと微笑んだ。


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