じっと彼女に見られ、やむなく寝室の戸を引くと、


「おやすみなさいませ」


「お、おやすみ」


一度もにこりともしないで、樋ノ上さんは頭をさげた。


まさか朝までこの部屋のまえにいないやろな…?


ふとそんな疑問を感じながら、勇気をふりしぼって寝室に足を踏み入れた。


「し…失礼します…ぅ」



なかは和室が二間続きになっていて、奥の部屋に布団が二組敷かれてある。それを見て心臓が縮んだ。


けれど朔夜の姿はない。


とりあえずホッ…と息をついて座り込んだものの、ドキドキ震える胸の動悸は抑えられない。


なんか吐きそ……!


どないしよ……きっともうすぐ来る……なにか、なにか襲われたとき武器になる物ない!?


慌てて部屋のなかをキョロキョロ見渡した。


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