お兄ちゃん……立ち上がって私の手を引いて……今すぐ逃げてや……! けれどそんな祈りも虚しく、刻々と時間は過ぎて、 夜も更け、つつがなく宴は終わってしまった。 二人で逃げるどころか、お兄ちゃんと満足に会話することもままならなかった。 「今日の小夜子は、今までで一番綺麗や。忘れんとき。これからも俺の宝モンやで」 別れ際、お兄ちゃんが囁いた言葉が最後の会話やった。 尊お兄ちゃん……そんな残酷なことを言わんといて。 こんなにこんなに好きやのに。 .