「コイツひとりがのたれ死んでも、泣くヤツおらんやろ?」


「兄ちゃん…!?……嘘やろ……!?死んでもええ人間なんか、ひとりもおらんよ…!」


お兄ちゃんの顔は見たことないくらい冷たくて、まるで別人やった。


うちの知ってる尊兄ちゃんやない!


子どものころ、手ぇ繋いで縁日にいった兄ちゃん……

私をおんぶしてくれた兄ちゃん……

捨てられとった仔猫を、拾ってきた兄ちゃん……

優しい尊兄ちゃん……


思い出が砂のように崩れてく。



全身の震えが止まらない。


悪夢や。まだ悪夢が続いてる
はやく目が覚めて……!!







「小夜子、これがお前の兄貴の本性だ」





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