私は目を見開いた。


さっき朔夜と通った入口の方から、黒のスーツに身を包んだお兄ちゃんが歩いてくるのが見えたから。


心臓が止まりそうなほどドキッとした。ただ歩いてるだけなのに、目を奪われて視線を反らせない。


いつもそうやけど、お兄ちゃんの周りだけ異空間みたいや。


お兄ちゃんは、やがて私と目が合うとあの笑顔で優しくはにかんだ。


「お帰り。小夜子」


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